メディアが多様化していくなか演劇は廃れゆく運命にあるのか、それとも盤石で根源的な芸術表現たりうるのか。編集部が注目する劇作家にお話をうかがってまいります。  




第2回
竹内銃一郎
(劇団「キノG-7」主宰)
 

 

──5/15 竹内さん主宰〈キノG-7〉の公演「満ちる」が千秋楽を迎えました。 竹内さんは〈斜光社〉〈秘法零番館〉〈JIS企画〉ほか、いくつもの劇団をつくってらっしゃいましたが、今回の〈キノG-7〉はどのような形で始まったのでしょうか?

竹内 90年代に佐野史郎さんと〈JIS企画〉という劇団を始めて、その時は隔年で公演を打とうということにしてたんだけど、とにかく本の仕上がりが遅くて申し訳がたたなかった。2003年くらいになって「本が半分くらいでも書けたら、いつ演るか決めましょう」ということにしたんだけれど、20年間書けなかったんですよ。近畿大学の教授になったこともあって、「劇団はやめよう」という気分もありました。そうしたら学生のなかに面白い本を書いてくる子がいて、これをおおやけにしたいなと思ったんだよね。それで学生に「これ、やりたいと思うんだけど、出てくれないか」「大学在学中にみんなでやってみたいというなら、劇団を作るけど、どうだろうか」と聞いたら、「劇団やりましょう」ということになって、〈DRY BONES〉という劇団をつくって4年くらいやってました。〈DRY BONES〉も終わり頃にはいい女優がいて、その子を中心にやりたいと思ったんだけど、彼女も三年生が終わった時に辞めるということだったので解散しました。
数年ブランクがあって、俳優の武田操美さんが「竹内さんなんかやりましょうよ」ってしょっちゅう言ってくるので、自分の戯曲で1時間くらいのリーディング公演を、隔月で6本やったんです(「夢ノ旅路」「花ノ紋」「チェーホフ流」「耳ノ鍵」「タニマラ(さびしい風)」「動植綵絵」)。これが〈キノG-7〉の始まりでした。武田さんは、30年くらい前に、「みず色の空、そら色の水」(1996年、伊丹・アイホール)のオーディションの時に会ったのだけど、抜群に面白かった。中学生のときに、私の「SF・大畳談」を上演したそうで、その時の彼女の認識では、本を出版している人はみな既に死んだ人だと思っていたらしい・笑。
リーディングの時は客があまり来なかったけど、面白かった。そんなことができたのも大学を定年で辞めて暇だったからかなぁ。




──竹内さんの戯曲はだいぶみっちり書かれているというという印象がありますが、小説家じゃなく劇作家となったのはなぜでしょうか?

竹内 小説を書きたいなんて一度も思ったことがないですね。小学4年生のときに担任の先生が道徳の授業で「芝居をつくれ」といって、それが楽しかった。小学生で既に4本、戯曲を書いたんだよ・笑。
小さい頃から映画を見ていたので、シナリオライターになりたいと思っていたんだよね。
劇団からたまたま声がかかって「2〜3年やってみるか」ということで始めて、作ってるうちに楽しくて続けてきちゃった。
本を書く時はもちろん苦闘するけど、書き上がった時に「これは面白い」と必ず思うんだよね。でも一週間くらいすると「そんなに面白くないな」と思ったりもする。
戯曲の場合、スタッフや俳優が少なくとも1〜2か月はそれを読んで取り組むから、面白くないと思われちゃうといけない。

──映画監督の大和屋竺さんが師匠だとどこかで書かれていましたが……

竹内 誰に教えられたかといえば、大和屋さんだけですね。映画のシナリオですが……。若い頃、彼の家に行って、書庫にダーッと本が並んでいるのを見て驚いて、それから本を買うようになりました。22歳のころですね。
小説家でいえば、大江健三郎が好きで、全集も持っていました。それからカフカ。大和屋さんが読んでいたのを見て真似たんです。100あるうちの100は読んでないけど、70〜80は読んでいます。
劇作家ではチェーホフとシェイクスピア。チェーホフの影響は大きいかもしれない。いくつのシーンで書くのか、シーンの終わりをどう終えて、始まりをどう始めるかとか、初期の段階ではチェーホフを意識して書いていたと思う。
日本の劇作家でいうと圧倒的に別役実さんかな。唐十郎さんも好きだったけど。別役さんの戯曲はセットがあまりいらないので、余計に真似しようと思っていました。




──上演する劇場のサイズというのは意識されていますか?

竹内 京都でやるとなると思い浮かぶ劇場は2つか3つ。自分には100人前後の公演が適していると考えると、今回「満ちる」を上演したTHEATRE E9になります。
東京にいた時も、本多劇場や紀伊國屋ホールでもやったけど、下北沢のスズナリくらいの大きさがいいなと思います。 映画が好きだったので、大きな劇場で役者が小さくしか見えないというのは考えられない。
公演でお金もうけしようという気持ちはまったくなくて、お客がはいって、受けたら嬉しいというところです。
来年2月に〈キノG-7〉でもう1公演、8月に〈JIS企画〉の公演をやってひと段落です。これで終わりって何回も言ってはいるけれど、来年は78歳だからね。こんな話やりたいとか、こういうメンバーでやりたいというのがでてきたら、まだやるかもしれないけど。
「満ちる」の映画監督役の藤原大介くんとは、二年くらい前に初めて出会いましたが、すごいと思いました。十年くらい前に彼と出会っていたら、自分の芝居の展開も変わっていたかもしれない。今回の芝居でもほとんど口出ししていないんだけど、毎日彼が演技を変えてきて……。
たまたま一緒に出演した俳優とか、舞台美術とか、稽古の2ヶ月間がうまくいっている時は楽しいもので、また一緒にやりたいな、とか、思うんですよ。
(2023.5.15)


 

キノG-7
設立:2017年
団員数:常連は5人
公演数:本公演5作(2023年現在)
主な公演劇場:THEATRE E9 KYOTO
 

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