メディアが多様化していくなか演劇は廃れゆく運命にあるのか、それとも盤石で根源的な芸術表現たりうるのか。編集部が注目する劇作家にお話をうかがってまいります。  



 

第5回
宮澤大和
ぺぺぺの会
中島梓織
いいへんじ
 

 

──ちがった作風の2つの若手の劇団で「LifeとWork」という新作を発表するとのこと。どのような作品になるのでしょうか。

宮澤 ペペペの会の制作の石塚晴日が企画したのですが、企画書に「人生においてどんな選択をしたとしても演劇を続けていくことができる」と書いてあって、その一言への共感から始まりました。

中島 お声をかけていただいて、演劇を仕事としている人もいれば、平日には仕事して土日は演劇をしている人もいる……いずれにしても演劇を続けている人がどのように続けているか、その多様性を示せるといいよね、という感じで始まりました。

──短編6作ということですが……。

宮澤 ペペペの会は俳優が3人いるので、僕が3つの作品を書きました。書く前に俳優それぞれと対話の時間を設けて、そこでインプットしたものを、僕が戯曲の形に出力します。前作「『またまた』やって生まれる『たまたま』」同様、インタビューから演劇を作っていく手法です。俳優それぞれの色とか考え方が多様でいい、多様だよねという状況を見せる場合、短編という形がいいと考えました。

中島 いいへんじは、俳優2人と私で3作、それぞれが一人芝居を自作自演します。各々で作って、3人で相互に見合うという作り方なので、ぺぺぺの会とは作り方も、作風も違います。それぞれの俳優が考えている「LifeとWork」というのも違うはずです……。私自身は、アルバイトもしつつ、劇場や学校でワークショップをさせていただくことも多く、それが公演を打つことにつながっていたりもします。




──シアターグリーン学生芸術祭(SAF=Student Art Festival)で、2017〜19年、いいへんじ、露と枕、ペペペの会と、早稲田界隈の劇団が3年連続で入賞していますね。

中島 SAFはコロナ前には毎年開催されていて、学外まで活動の幅を広げたいという学生の一つの選択肢でした。そこでいったん腕試しができたというか、人目に触れることができました。

──ペペペの会は千葉大学からの参加となってますね。

宮澤 僕は早稲田大学出身ですが、ペペペの会は千葉大学の演劇サークルで出会った人たちと結成しています。「劇団個人主義」という千葉大学の演劇部で、三条会の関美能留さんと関わりが深いところです。僕は、千葉出身なもので、高校生の時、千葉大の演劇部の公演をよく見に行っていたんです。面白いな〜と思っていて、大学は早稲田に入学して、千葉大の演劇部に入部したのです。それでも足りず、その後、早稲田の演劇サークル(劇団木霊)にも入りました。

中島 私は高校の時から演劇をはじめて、早稲田大学演劇倶楽部にはいりました。自由にユニットが組めるサークルだったので、同期の俳優と「いいへんじ」を結成しました。SAFで入賞したのは結成1年目、私が大学2年生の時でした。

──今の演劇について思うところはありますか?

中島 演劇はずっと大変ですよね。最近では、自分たちの表現とうまく重なる部分を見つけて、他のジャンルとコラボする人たちも目立っています。「エリア51」という劇団は、バンドとコラボして、生演奏でパフォーマンスをして、ライブハウスで公演をしているし、「ロロ」という劇団は歌人とコラボした作品を発表しています。我々だと、人文系の著者とアフタートークをしたりして……演劇という一つのジャンルだけにこもらないよう模索している感覚はありますね。一方で無骨に演劇を続けている人たちもたくさんいます。

宮澤 コロナ以後、難しい状況でやっているということは感じていますが、前作公演のトークゲストに来ていただいた伊藤比呂美さんに、「生の人間が目の前にいて、肉声で喋って、自分の鼓膜が震えて、というコンテンツは、5年後10年後にはとてもリッチな体験となるはずだから絶対続けていかなくちゃ……」という話をし、伊藤さんはその話に頷いてくださいました。今は難しいかもしれませんが、トンネルの出口は明るいと思って長期戦のつもりでやっています。

──5年後、10年後、どうなってますかね。

中島 演劇をやっていない自分というのはあんまり考えられないですね。二十数年生きてきて自分が得意なのはやっぱり演劇だという手応えがあって、それがなくなったら抜け殻になってしまうでしょう。作品を発表する以外でもワークショップなど何かしらの形で演劇に関わっていられたらと思います。

宮澤 僕は、やっていて向いてないと思うこともあって、公演期間が空いて、仲間と会わない時期が続くと、このまま辞めちゃうのかなと思うようなこともあります。ペペペの会結成前は、上の世代の劇団に俳優として参加させてもらっていましたが、そこの劇団の人は、劇作家・演出家というのはやらせていただく仕事だと話していました。ペペペの会のメンバーがいる限りは続けたいと思っています。




──世代的にネットやスマホが日常ツール化していると思いますが…。

中島 最近ではテレビよりもYouTubeを見る時間が長いですね。つまらないと思うとピッと飛ばせるから、最初から面白くないと見てもらえないということがよく言われますよね。音楽でも、イントロが長いと曲が飛ばされてしまうとか。自分もやっているかもしれません。ただただ怠惰な消費者に成り下がっている……。と感じることも多いです。

宮澤 僕も見ますけど、Youtuberの出ている動画は見ていなくて、ニュースを見ていますね。家にテレビを置いていないので、NHK FMでニュースがやっていない時間帯は、YouTubeでニュースを見る、みたいな。

──よく「子供が文章を書けなくなる」ということが言われたりもしますが、中島さんの場合は、しっかり書いてます。

中島 日常的な情報の摂取は「早く分かりやすく」という方向に変わってきているけれど、自分が出力するときは時間をかけてやりたいという気持ちがあります。演劇は始まったら劇場を出られないという強制力のあるメディアですよね(笑)。ちょっと辛抱して面白かった、この調子じゃどうかと思って最後まで見ていたら面白かったというのは、家でYouTubeを見ているだけでは得られない体験です。

宮澤 僕の場合、日常的に見るメディアがYouTubeに変わっても、飛ばせないんですよね。小さい頃から、読むのが苦痛な本でも、とりあえず最後まで読むようなところがあった。家で映画を見るときも、途中でやめようと思えばやめられるんだけど、最後まで見てしまう。いつか面白くなったら損と思うのか、実際そうなることは少ないんだけど、最後まで見ることを続けています。

中島 物心ついた時から思い通りの速さのメディアに触れている、いまの子供達がどうなっていくのか、ということはよく考えますね。我々が生まれた頃はそれほどでもなかったですから。ワークショップで子供たちと接していると、そうしたことを感じることもあれば、一方で、演劇を体験してもらう時に、だんだんわかると面白いよね、というようなことを挟み込んでおくと、子供にも手応えがあるように感じたりもします。お互いにそうした手応えがあることは伝え続けていけたらいいなと思います。その先に何かがあるかもしれませんので……。
(2024.9.29)


※「LifeとWork」は11/27〜12/2早稲田小劇場どらま館にて上演。
※「LifeとWork」公演特設Xアカウント


 

ぺぺぺの会
設立:2018年
団員数:現在6人
公演数:13作(2024年現在)
主な公演劇場:北千住BUoYなど
 

 

いいへんじ
設立:2016年
団員数:現在3人
公演数:12作(2024年現在)
主な公演劇場:早稲田小劇場どらま館、こまばアゴラ劇場、東京芸術劇場など
 

第4回  

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